TVアニメ『NEEDY GIRL OVERDOSE』公式サイト

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アニメ『NEEDY GIRL OVERDOSE』スタッフ鼎談

原案・シナリオ・監修:nyalra × 制作統括:稲垣亮祐(Yostar Pictures)
× プロデューサー:木村吉隆(アニプレックス)

――TVアニメ『NEEDY GIRL OVERDOSE』アニメ化の経緯について教えてください。

木村:アニプレックスとして、原作『NEEDY GIRL OVERDOSE』(以下、ニディガ)のアニメ化に向けて動きはじめたのは2023年の2月です。ただ本当の意味でのはじまりは、nyalraさんと稲垣さんが中野で偶然出会ったことがきっかけなんですよね?

稲垣:あれは僕も本当に驚きました(笑)。

nyalra:ある日、中野ブロードウェイの喫茶店にいたら、後ろの席から「nyalraが……」と、僕の名前が聞こえてきたんです。それで、僕の話をしていたのが稲垣さんで。偶然なのか運命なのかわかりませんが、それが最初の出会いでした。

――稲垣さんは、なぜ会話の中でnyalraさんのお名前を挙げていたのでしょう?

稲垣:その出会いから、さらに1年ほど前に遡るのですが。僕はずっとニディガのようなアニメ作品をずっと作りたいと思っていたんです。いわゆる『serial experiments lain』や『VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action』のような雰囲気の作品ですね。そんなとき、一緒に仕事をしていたイラストレーターの方が、たまたまnyalraさんと繋がりがあったんですよ。

nyalra:ニディガのテストプレイを募集した時に、来てくださったんです。

稲垣:その方が「この作品、絶対稲垣さん好きでしょ」って、ニディガを教えてくれたことが、nyalraさんを知ったきっかけでした。それから「nyalraさんに会ってみたい!」とずっと思っていたんですが、直接連絡するのを躊躇していて。まさか1年後に、たまたま中野の喫茶店で会うとは思いもしませんでした。あるクリエイターの方に「nyalraさん紹介してよ」なんて話をしていたら、後ろで本人が取材を受けていて。「僕がnyalraです」と(笑)。

――そこからアニメ化までどのように進んでいったのでしょうか。

nyalra:実はアニメ化の話自体は、ゲームをリリースしてすぐに来ていたんです。ただ最初に来ていた企画は、すこし軽めな感じで、なかなか具体的な形にならなくて。そんなときに稲垣さんと出会って、そのあと木村さんともお会いすることになり。稲垣さんも木村さんも"インディー魂"を持った方々だったので「ここだな」と思いました。木村さんはそのとき、『グノーシア』のアニメ化を進めていたんですよね?

木村:そうですね。ちょうど『グノーシア』のプリプロ(シナリオ会議や、キャスティングなど)を進めながら、インディーゲームのカルチャーについての理解を深めている中で、ニディガに出会いました。本当にぶっとんだゲームというか、脳を揺さぶられる体験をさせていただいて。こんなものどうやって作ったんだと思って、原作元のワイソーシリアス(WSS playground)斉藤さんに問い合わせをさせていただきました。それから数日後にはnyalraさんとお会いして、その翌日くらいには稲垣さんとお会いすることになって……と。ものすごいスピードで話が進んでいきましたね。

稲垣:アニプレックスさんが入って、本格的にアニメ化が進んでいった感じですね。

木村:斉藤さんのオフィスでnyalraさんにお会いさせていただいた時点で、nyalraさんの中にはすでに「どういうアニメにしたいか」という明確なビジョンがあったんですよね。先ほどnyalraさんが“偶然なのか運命なのか”とおっしゃっていましたが、自分にとっても、アニメ化は「決まるべくして決まった」という感覚はありました。

稲垣:うち(株式会社Yostar)の李衡達社長も、ニディガが世界的に人気のあるタイトルということで、期待してくれています。

木村:現場に熱量がありますよね。絵コンテや設定など、さまざまなクリエイティブを見せていただいていますが、そのすべてから「ニディガのアニメを絶対にいいものにする」というクリエイターの想いを感じます。稲垣さんが本当に素晴らしい制作体制を作ってくださって、作品の1ファンとしては本当にワクワクしながら、アニメニディガができていくところを見ています。

――アニメ化のスタッフ周りの話についてもお伺いさせてください。本作の監督は中島政興さん(Yostar Pictures所属)ですが、スタッフ選出はどのような経緯だったのでしょうか。

稲垣:中島は、実は元ホストという経歴を持っているんです。さらに漫画家を目指していた経験もあって。若いころからさまざまな経験をしていて、その中でアニメや映像への情熱を持ちつづけていた人間なんです。仕事仲間として話をしていく中で、彼の経験値や作りたいものの方向性を考えると「nyalraさんの思想を誰よりも理解できるスタッフじゃないか?」と思って、監督を任せることにしました。実際に任せてみたら期待以上で。いまは「nyalraさんのシナリオを世界で1番理解しているのは俺だ!」と言いきるほどの熱量で取り組んでくれています(笑)。

nyalra:中島さんは、どちらかというとアニメより実写の感性を持った方なんですよね。『ブルーアーカイブ The Animation』の第7話(絵コンテ・演出:中島政興)の銃の描写がすごく丁寧で。明らかに実写映画的な視点を持っているとわかったので、シナリオでは遠慮なく「この映画のこのシーンがモチーフで」とか「実写的な動きで」といった注釈を入れています。

稲垣:中島はニディガのショートアニメの制作から関わっていて。現在、nyalraさんのシナリオでYouTubeで公開されています。そちらにはTVアニメ『【推しの子】』でキャラクターデザインを担当された平山寛菜さんにもご協力いただきました。

木村:けろりらさんにご協力いただいたものもありましたね。

nyalra:けろりらさんはTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』などで活躍されているアニメーターの方なのですが、年も近いし家も近くて。CloverWorks(アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』のアニメーション制作を担当)では「けろちゃん」と呼ばれているので、僕もけろちゃんと呼んでいて。一緒に深夜アニメを見たりする仲で、ショートアニメの制作も協力してもらいました。

木村:正直なところ、インディーゲームをTVアニメ化すると聞いて、不安に思うファンの皆さまもいらっしゃると思います。作品の大事なところが変わってしまうんじゃないかとか、アニプレックスのような企業が、ファンの皆さまが愛してくださっているニディガを奪ってしまうんじゃないかとか。そういう懸念は、僕自身もファンの1人なので当然わかります。ただニディガについては、稲垣さんが中島さんを起用されたことや、他のスタッフとのコミュニケーションを含めて、全員が共通して「ニディガの本質を保ったまま1クールのTVアニメにする」という大前提をもっています。原作ゲームやキャラクターを愛してくださる皆さまに向けて、あるいは、これからニディガに出会う皆さまに向けて。僕たちは作品性を変える気はありません。さらに言えば、万人受けを狙いたいわけでもありません。全員が原点であるゲームに真摯に向きあい、nyalraさんが紡いだシナリオをアニメにするために、全身全霊で頑張っています。そのクリエイティブを皆さまに感じていただきたいし、伝えていきたいと思っています。

――原作『NEEDY GIRL OVERDOSE』はゲームですが、アニメのシナリオ開発はどのように進めていったのでしょうか?

nyalra:まず明確に伝えさせてもらったのは「ちゃんと1クール(全13話)のストーリーをやりたい」ということ。原作ゲームは“超てんちゃんとピ”の2人だけの世界ですが、アニメでは“超てんちゃんと超てんちゃん以外の世界”をしっかり描きたかったんです。

木村:ニディガのアニメ化には、大きく2つの可能性があったと思います。一つは『ポプテピピック』のように、単話で楽しめるぶっとんだもの。もう一つは1クール通してしっかりストーリーを描くもの。nyalraさんにお会いした日に「ストーリーをやりたい」という明確なビジョンをいただいたので、後者になりました。

nyalra:まずはプロットを出して「こういう話を書きたい」と伝えました。それから隔週、会議室でシナリオを書いて、原稿を提出する形になりました。僕が夜行性で昼夜逆転しているので、時間帯が遅くて申し訳なかったんですけど(笑)。

――ちなみに、何時頃まで打ち合わせをされていたんですか?

木村:深夜2時ごろとか、3時ごろとか……。nyalraさんが夜7時か8時ごろにアニプレックスに来られて。万年筆で一度紙に書いたものを、そのあとパソコンで清書するというスタイルでしたよね?

nyalra:そうですね。最初はいつも万年筆で書いています。

木村:来社されてから6時間後くらいに初稿が上がって、そこから斉藤さん、稲垣さん、僕が集まって、シナリオ会議をはじめるような流れでした。

nyalra:深夜なので、みんな疲れていて、フィードバックはほぼ「よかった」か「よくわからなかった」の2択でした(笑)。

木村:僕としては、とにかく凄みのあるシナリオで、こちらから言えることがほとんどなかったんです。第1話、第2話、第3話……と進んでいく中で「これは、唯一無二のものになる」という確信が生まれました。

稲垣:ニディガのアニメの映像は、nyalraさんの脳内にすでにあるんじゃないかと思っていて。以前、庵野秀明さんと『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』でご一緒した時も感じたんですが、エヴァは庵野さんの脳内にあるもので、一度全部出してもらわないと周りが映像化できない。同じように、nyalraさんにやりたいことを全部出してもらう必要があると。もしも途中で書けなくなって、制作的なタイムアップが来てしまったら、我々がシナリオを引きとって形にしようとも考えていたのですが。結果的には、ありがたいことに最初から最後まで「こうやりたい」という流れを作ってくださったので、それを待つ形になりました。

木村:「nyalraさんの脳内に映像がすでにある」というのは、僕もその通りだと思っています。nyalraさんは作家さんなので、テキストでの表現がベースではありますが、シナリオにはビジュアル的なリファレンスも詳細に記されていて。キャラクターの服やアクセサリー、空間のイメージ、音楽、その他の一挙手一投足に至るまで。もう頭の中で映像が完成しているのだろうなと思いました。稲垣さんがおっしゃった庵野さんの話でいえば、nyalraさんの頭の中にあるものを、できるだけそのまま形にできるようにすることが、僕がアニメニディガにできることだと思っています。

――nyalraさんは、アニメ脚本の執筆の際に大事にされていたことはありましたか。

nyalra:内容ではなく思想の話になりますが。自分が監督として一番好きなのは、押井守監督なんです。そこから派生して、押井監督が影響を受けたゴダールやキューブリックも好きで。押井守監督の場合はアニメ映画を作られていますが、その根底にあるのは「映画は監督のその時の思想そのもの」という考え方。押井作品にしろゴダール作品にしろ、基本的に混沌としていて。突然思想の話が始まったり、政治の話になったり、詩を引用したり、とても自由なんです。僕はそれがすごく好きで、自分の作品でも同じように、突然詩が挟まってもいいし、突然花のカットだけが出てきてもいい。整合性より先に「僕はこれを考えているから、これが答えです」というものを提示するしかないと思っています。

木村:nyalraさんのシナリオを読んでいて思ったのは、僕はこの作品のすべてを理解できないだろうということでした。nyalraさんが見てきたこと、感じたこと、芸術的な要素、そのすべてが詰まっているから。でも、すべてが理解できなくても、ものすごく面白い。それって本当にすごいことで。

nyalra:シナリオ会議は初めての経験だったので、何が正解かわからなくて。スケジュール通りのシナリオを上げるのが普通だと思っていたんですが、それを喜んでくれるのが不思議でした(笑)。

稲垣:いやいや、ありがたいことですよ!

木村:今の話をしていて思いだしたのですが、最初のシナリオ会議のときに「nyalraさんの一番の強みはなんだろう」という話をしたことがあって。僕は“言葉”だと思ったんです。nyalraさんの書くセリフには、読んだ瞬間に刺さる説得力があると思っています。誰もがなんとなく感じていること、思っていても口に出さないことを、核心を突く形で言葉にしてくれる。そのはらわたをえぐるような言葉の力こそ、nyalraさんの魅力だと思っています。

――nyalraさんが木村さん・稲垣さんとシナリオ会議を重ねる中で感じたことはありましたか?

nyalra:話し合う中で、アニメの制作スケジュールや制作費がどんどん決まっていって、さすがアニメ制作のプロフェッショナルだなと。嬉しかったのは、シナリオが上がっていくにつれて、制作の可能性が広がっていったことです。木村さんも稲垣さんも「こういうこともできるかもね」と前向きに話してくださって、それが本当に嬉しかったです。あとはシナリオ会議の初期の段階で、原作でご一緒したお久しぶりさんにキャラクター原案をお願いできることが決まりまして。それはとても安心しました。

――アニメーションの音楽を手がけるスタッフとしてAiobahn +81さん、原口沙輔さん、DÉ DÉ MOUSEさんのお名前があります。本作の音楽制作については、どのように進めているのでしょうか?

木村:Aiobahnさんは原作ゲームのBGMや「INTERNET OVERDOSE」、「INTERNET YAMERO」など、ニディガの世界観を体現する音楽を手がけられていたので、是非アニメでもご一緒したいと思っていました。Aiobahnさんと同じく、原作からつながりのある原口さんには、この作品において、1つのキーとなる要素を担っていただいています。DÉ DÉ MOUSEさんには、作品の空気感を担う劇伴をご制作いただいています。アニプレックス作品では『ワンダーエッグ・プライオリティ』などの劇伴を手がけられていて、間違いなくニディガに寄りそっていただける作家さんということで、アニプレックスの音楽チームとも相談をして、ご提案させていただきました。

――DÉ DÉ MOUSEさんの起用はアニプレックスからの提案だったんですね。

木村:そうですね。ニディガの音楽は原作や、そこから生まれた楽曲によって、すでにカルチャーやトンマナが確立されています。きっとファンの皆さまの中にも「ニディガの音楽といえば」のイメージがあると思っていて。ゲームからアニメへと展開していく中では、原作や、原作を応援してくださっているファンの皆さまへのリスペクトは絶対に必要だと思っています。そして、すでにある世界観に寄りそいながら、その世界観をアニメとして広げていける方として、DÉ DÉ MOUSEさんに劇伴をご相談させていただくことになりました。

nyalra:音楽に関してはもう1人、まだ発表されていない音楽家の方がいるのですが、その方を含めた4人体制で制作しています。Aiobahnさん、原口さん、DÉ DÉさん、そして未発表の方。キャラクター原案のお久しぶりさんもそうですし、いい意味でみんな友達と作ったという感覚ですね。

木村:DÉ DÉさんは原口さんと一緒にユニットを組まれたりもしているので、そのつながりもありますよね。

nyalra:友達の友達は友達、みたいな(笑)。

稲垣:Yostar Picturesのメンバーも、割と身内で作った感覚があります。僕は関係性の薄い監督を外部から連れてくるというやり方は、あまり好きじゃなくて。この作品に関しては、信頼できる仲間と作りたかったんです。

木村:稲垣さん、最初におっしゃっていましたよね。外部の人をどんどん入れるのではなくて、内製とまでは言わないですけど、顔の見える関係性で作っていきたいと。

稲垣:そうそう。あとは関わっているスタッフの年齢もみんな若いので、そこもしっかり見てほしいです。シナリオを書いているときは、nyalraさんも20代でしたし。若いクリエイターたちのエネルギーが詰まった作品になっていると思います。

──アニメ放送に先駆け、3月にはテアトル新宿・梅田での劇場先行上映が予定されています。こうしたイベントは、どのように企画されたのでしょうか。

稲垣:3月の劇場先行上映については、ちょうどアニメの制作中に『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』の公開がありまして。「劇場での先行上映、いいよね!」という話が出たのがきっかけでした。

木村:それなら実現してみようということで(笑)。上映はテアトル新宿とテアトル梅田の2館を予定しています。TVアニメを劇場版として再編集し、1本の映画として楽しんでいただけるよう、中島監督を中心に準備を進めています。上映にテアトル新宿とテアトル梅田を選んだのは、劇場版『空の境界』を公開していたころから、テアトルさんには「ここから新しい何かがはじまる」というイメージがあったからです。僕は『空の境界』でアニメを好きになった人間で、その『空の境界』も同人……いまで言うところのインディーからはじまった作品です。かつての自分がテアトル梅田で衝撃を受けたように、いまのアニメファンの皆さまにもニディガで衝撃を受けてほしい。そんな願いも込めて、劇場先行版を上映させていただくことになりました。

──そして2026年4月、アニメ『NEEDY GIRL OVERDOSE』の放送がはじまります。改めて、皆さんがどのような気持ちで、作品に臨んでいるかをお聞かせください。

稲垣:今の時代、SNSで誰かに見てもらうことで自分を確かめている人がすごく多いと思うんです。ニディガは、まさにそうした時代を象徴する作品だと感じています。「承認欲求」というテーマに共感してくださる方が多いからこそ、ここまで大きな反響を呼んでいるのだと思います。アニメという映像表現でそれを描けるのは、とても面白い試みですよね。
インターネットの危うさや中毒性、エンタメの楽しさと裏腹にある危険性、そうした"薬のような感覚"がこの作品にはあります。ゲームは自分で操作して体験するものですが、アニメは流すだけでも入ってくる。その感覚をどう伝え、どう受け取ってもらえるかが楽しみです。ある意味では、ライブイベントのように“体験する”作品になればいいなと思っています。

木村:体験といえば……ですが。ニディガのある話数のシナリオを読んだとき、あまりにも衝撃的で。「これ、どうやって思いついたんですか?」とnyalraさんに聞いたら「実話です」と話されて。もしもこの世に、血で書いたシナリオというものがあるなら、それはこういうものなのだなと思いました。

nyalra:シナリオを批評家の友人に読んでもらったとき、ありがたいことに「現代のサブカルが目を背けてきた、救われない側の女の子たちをちゃんと描いている」と言っていただきました。「弱者に寄り添うという意味で、これは文学だ」と。ただ、僕自身はそんなことを明確に意識して書いたわけでは全くなくて。結局、自分の実体験をもとにしている部分が大きいんです。僕は沖縄で生まれて、母が再婚するまで母と2人きりで育ちました。自分には母しかいなくて、その母と日々を過ごして、その時のことを書いている。それが偶然、現代の女の子たちにも共感してもらえる形になっているのかもしれません。

木村:nyalraさんのすごいところは、そうやって現実を自分の目で見て書くところです。話を聞いただけではなく、自分の足で現場を訪れて、空気を吸って、血肉の通った人間として描いているじゃないですか。だからキャラクターが生きているし、アニメになってもそのリアリティが失われることがない。本作には、いわゆる“病み系”と呼ばれうる子たちも登場するのですが、作品が描いているのはその子たちの行動そのものではなく、“なぜそうなったのか”という背景なんです。

稲垣:その視点は、作品全体に通底していますよね。

木村:タイトルも含めて、この作品はすごく刺激的だと思います。「そもそもオーバードーズという言葉を使うべきじゃない」という声も、世間にはあります。ただ、この作品はオーバードーズという行為そのものを主軸にしているではないわけです。オーバードーズへと手を伸ばすような子たちが、どういう理由で、どういう背景で、息苦しさを覚えているのか。そこにちゃんとカメラを当てようという思いが、アニメの中で明確に示されています。

nyalra:オーバードーズに関しては、世間的にも規制の議論が当然あると思います。ただ「オーバードーズは悪いことだから規制しよう」という話については、正直バカバカしいと思っていて。僕自身、18歳くらいのころ、無職で睡眠薬をたくさん飲んでいた時期がありました。起きていても意味がないし、たくさん飲むと幻覚が見えて、気持ちよくなれる。自分がはまっていたわけだから、そのときの自分に「オーバードーズはよくないよ」と伝えても、何の意味もないことを知っているわけです。だとしたら「なぜそうなってしまうのか」を掘っていくべきじゃないですか。なぜオーバードーズをするのか、なぜ夜の街で遊ぶのか。「オーバードーズは悪い」で終わらせるのではなく「じゃあオーバードーズをしている子たちの話を聞きなさいよ」としか思えない。
最近はカナダに行って、フェンタニル(アメリカで社会問題になっている合成麻薬)汚染の現場を直接見に行きました。1人で行きましたが、現地にいたのは悪い人たちではなかった。当然スラム街ではあるんですが、「安価で気持ちよくなれる薬が売っていたら、みんなやるよね」っていうだけの話で。みんな漫画やアニメのTシャツを着ていて、日本人が来ると気さくに話しかけてくれたりして。「人間ってそういうものなんだな」と、改めて感じました。

木村:この作品は抜群のエンタテインメントとして楽しめるものになっています。それは、そこらにいるアニメファンの1人としての自分がお約束します。ただ、その奥にある“何か”を映像体験として感じとってもらえたら、スタッフの1人としては嬉しいです。

nyalra:今回のアニメ化については、本当にお2人に好きなように作らせてもらいました。僕がシナリオを書いて、好きなように作ったわけですから「なんか違う」、「ズレてる」と思う方がいても、申し訳ないとは思いません。それくらいやりきりました。僕の中では、これがアニメ『NEEDY GIRL OVERDOSE』です。

稲垣:いろいろなことを話しましたが、シンプルにアニメーションとして面白いものが作られているので、期待していてほしいです。

木村:ものすごく濃厚な1クールになると思います。4月、この作品だけを楽しみにしてほしい!と言っても、それに応えられるだけのものになると思います。そうできるように、スタッフ全員が全力を尽くしているので、楽しみにしていてください。僕もニディガファンの1人として、4月を楽しみにしています。

nyalra
原作『NEEDY GIRL OVERDOSE』シナリオ・企画担当。アニメでは原案・シナリオ・監修とともに、オープニングテーマ『INTERNET ANGEL』の作詞を手がけている。
稲垣亮祐
Yostar Pictures所属。担当作にアニメ『キズナイーバー』ラインプロデューサー、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序/破』デスク兼設定制作、『FINAL FANTASY Ⅶ ADVENT CHILDREN』制作進行など。
木村吉隆
アニプレックス所属。担当作にアニメ『グノーシア』プロデューサー、アニメ『鬼滅の刃』遊郭編-刀鍛冶の里編 アソシエイトプロデューサー、劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』アシスタントプロデューサーなど。